あなたは月に何冊本を読んでいますか?

最近ラジオで読書に関する興味深いニュースを聞きました。
文化庁が公表した2023年度の「国語に関する世論調査」によると1ヶ月に1冊も本を読まない人が全体の6割に上るという結果が出たそうです。最近は色々なコンテンツが多く、私も毎日のようにSNSや動画、各種サブスクサービスを消費していて本を読む時間は正直足りていません。でもやっぱり読書も楽しいコンテンツの1つだと思っています。せっかくの機会ですから、最近読んだ本をご紹介しましょう。

📕『つまづきやすい日本語』飯間浩明・著(NHK出版)
国語辞典編纂者である著者が、長きに渡り言葉を観察してきた視点から、言葉の性質について語った1冊。たったの100ページなので、あっという間に読めます。
作中、一番興味深かったお話は、よく世間で言われる「ことばの乱れ」について。
「ら抜き表現」とか「⚪︎⚪︎円からよろしかったでしょうか?」などの、「間違った日本語」と言われる表現ですね。その「ことばのみだれ」とやらはいつから始まったのか、著者の考察が面白かったのでご紹介します。
江戸期あたりまで、日本語は「話し言葉」と「書き言葉」が明確に分かれていたようです。
つまり「文章を書くときに使う伝統語」と「普段話すときに使う日常語(俗語)」の2つが同時に存在すると意識されていた時代でした。
それから近代以降は、書き言葉を話し言葉に近づけた「言文一致体」が普及し始め、話し言葉が書き言葉の手本とされるようになりました。
とはいえ、話し言葉は、かつては文章として記す必要のなかった俗語であり、口から出たらすぐに消える即興性を持ち、状況によって多様に変化する性質を持っています。そんな性質を持った話し言葉を手本にすればどうなるか。
手本のはずなのにどんどん変化していってしまう矛盾に人々は気づいたわけですね。
「こんなに変わっては困る。ことばの乱れだ!」
こうして「ことばの乱れ」という批判は戦後以降に誕生し、今日に至るそうです。
言文一致体が主流になったときから言葉が乱れるのは避けては通れない道だったということですね。

ついでにもう一冊。
📕『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』Kazu Languages・著(SB新書)
外国語習得の方法について書かれた本ですが、アラビア語の紹介が興味深いのでそこだけピックアップしてご紹介します。
アラビア語は現在も、話し言葉と書き言葉が分かれているそうです。
知識層が書き言葉や公的なスピーチで使う標準アラビア語と、一般の人々が話し言葉として使うアラビア語に大きく分かれるらしく、標準アラビア語は昔の形からほぼ変わっていない言語なので、会得すれば7世紀に編纂されたイスラム教の聖典『コーラン』の原文を現代でもそのまま読めるそうです。

このように読書をしているとそれぞれ違う本で書かれていた知識同士がクロスオーバーする場面があります。こういう楽しい体験はSNSでは摂取できません。
あったとしても、かいつまんででしか書かれていないので、腑に落ちるに至らない気がします。
知らないまま生涯を終えても何の問題もない知識だとは思いますが、こういう体験を得ると豊かな気持ちになり、昨日の自分よりも賢くなったと自惚れることができます。
暑苦しい熱帯夜が続く夏も終わりましたし、秋の夜長に読書などいかがでしょうか。

(制作部・S)

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